ウサギ


食欲不振 1
オレ、病気じゃないぜ。
野菜をな、ちょっと
食いすぎただけなんだ。
  オレって、こう見えてもデリケートなんだぜ





2007年5月2日(水)


このところ、ゴブがやや食欲不振だ。フンがいつもより小さいし、量も少ない。ケージから出してやれば、それなりに喜んでキャッキャしているが、ケージの中ではうずくまっているか、寝転んでいる時間が長い。

ゴブの食餌は、朝晩30gずつのペレットと牧草(食べ放題)だ。ペレットの量は、体重2.2kgのウサギにしては少なめだと思うが、この日は仕事を終えて帰宅したときもペレットはまだ残っていた。牧草も大して減っていない。

これはちょっと困った事態だ。というのも、連休後半、一泊で出かける予定にしているのだ。鳥たちは、チェリーの食餌制限もあるので連れて行くことにしているが、ウサギにはお留守番をしてもらうつもりだった。

この様子じゃ、ちょっと心配だ。
ゴブには、ちょくちょくある事で、大抵は放って置けば治ってしまうのだが、ほぼ2日間家を空けてしまうことになるので気がかりだ。


実は、今年のお正月に帰省先でレンが餌を殆ど食べなくなってしまい、駆け込んだ動物病院でしこたま怒られた。「連れて来るのが遅すぎる」と…。
そのときの獣医さんの顔が思い出されて、「うーん、やっぱ連れて行くか…」となった。

しかし、ウサギたちはかかりつけの病院がなかった。避妊・去勢手術をしていただいた病院でずっとお世話になっていたのだが、ある日、ウサギを診てくださっていた獣医さんがいなくなってしまったのだ。

もともと、そんなにウサギが得意な病院ではなかったが、ちょっと無口で不器用そうな(もちろん、手つきがではない)その若い獣医さんは素晴らしく勘が良かった。

職場の仲間内では、その獣医さんの事を“にゃんこ先生”とか“ネコ兄ちゃん”と呼んでいた。その獣医さんにかかると、どんなネコでもおとなしく治療を受けるのだそうで、猫飼いさんからは絶大な信頼を得ていた。

その先生がいらっしゃらなくなって、飼い主はたいそうがっかりしたし、ウサギたちは“かかりつけ医”を失ってしまった。その後、病院にいく必要もなかったので、ずっとそのままになってしまっていた。


新しい病院を見つけなくてはならなかったが、目星を付けている病院があった。
以前、“うさぎと暮らす”という雑誌で紹介されていた病院で、隣市にある。私の住まいは市境に近い所にあるので、車で行けばせいぜい15分ほどの距離だ。しかも、ありがたい事に夜9時までやっている。

連休の中日で、珍しく定時で帰宅したこともあり、偵察がてら出かける事にした。



* * * * * * * * * * * * * *



診察室に入ると、まさしく雑誌で見たまんまの丸っこい(顔も体も性格も)先生が立っておられた。雑誌には“獣医7名”と書いてあったから、「ちょっとラッキーかも♪」と思う。

とにかく、話し方も身のこなしも穏やかな先生で、ウサギのような臆病な動物も安心してお任せできそうであった。


早速、ゴブをキャリーから出そうとすると、
「先にお話を伺いますから…」と押し留められた。

現在の症状を聞かれて、大したことはなさそうだが、お留守番をさせるのに心配なため、早めに連れて来た事をお話しした。

「OK、OK、分かりましたよぉ」と先生。
(早速、“OK先生”とあだ名を付けさせていただいた)

病歴についても聞かれた。
1年前はよくケンカをして怪我をした事、一度、ケンカの傷が元で皮下気腫になった事をお話しした。

「ほう、皮下気腫ですか」と、ちょっと深刻そうな顔で先生がうなづいた。
ん? やっぱり、アレはやばかったのか? すこぶる険しい顔つきで「これは良くないです」と言った“にゃんこ先生”の顔が思い出された。“もう助かりません”とでも言わんばかりであったが、飼い主の方は
「やだ、もう大げさなんだから〜」と能天気に構えていたものだ。


先生はキャリー扉の金網越しにゴブの顔をちらりと見やり、
「この子、おとなしいですか?」と聞いてきた。

「いえ、荒いです」と正直に答える。今は若干丸くなったが、1年前は正真正銘の噛みウサギだったのだ。

「じゃあ、ゆっくり診ましょう」と、先生はキャリーから出したゴブを、それはそれは慎重に扱ってくださった。

「お腹が膨らんでいるとか見て分かりますか?」と聞かれて、

「この子、ずんぐり体型なので見ても分かりません」と答えると、先生もゴブを見て納得されたようだ。(実は、ずんぐりしてなくても私には分からない)


触診後、歯も見てくださった。歯を見られている間のゴブのイヤそうな顔ったらなかった。
あごの骨のラインと前歯は非常に良い状態だそうだ。左の奥歯が少し伸びて斜めになっているが、現時点では問題はないとの事だ。

「あとは、お腹にガスがたまっているかどうかですが…レントゲンを撮ってみるか、このまま様子を見るか…どうしますか?」と聞かれた。

触診じゃ分からないのか…とちょっとがっかりしつつ、レントゲン、お金かかるなーと迷った。

「この子はときどきこういうときがあるし、兄弟のウサギ(レン)も、この前、餌食べなくなって、“ガスがたまっている”という事でお薬飲みましたので…そういう体質なのかもしれないです。」と言ってみた。

「じゃあ、やっぱりレントゲン撮りましょうか」と先生。

「じゃ、お願いします」と答えつつ内心、涙…。


写真が出来上がって、別室に呼ばれた。
その部屋の向こうでは、もう夜の8時を回っているというのに、何と手術中だ。ここの先生方はなんという働き者かと驚いた(だって、世間は9連休中なのだ)。

写真は上下左右から撮影されたようで、頭部4枚、胴体2枚の画像がパソコン画面上に映し出されていた。

“えっ、こんなに撮ったの?”と内心、青ざめる。

先生は丁寧に画像の説明をしてくださった。
歯の状態は良好で、腸管内にも大きなガスはないという事で、一安心した。

「小さいガスはポツポツありますけど…」と言うので、

「普通は、そういうのもないんですか?」と聞くと、

「いえ、普通にあるものですよ」という事だ。


結局、歯もお腹も異常なしで、「あとは様子を見てください」という事になった。

奥歯の件については、
「牧草をたくさん食べれば自然に磨り減るので、もう少し牧草の割合を増やすといいでしょう」とアドバイスをいただいた。

毛球症予防薬があるので換毛期の間、与えてはどうかと言われたので、その薬もお願いした。


そのうちに他のウサギたちの健康診断も…とお願いすると、エキゾチック専門の獣医さんが来られる日があるので、その日に予約すれば良いという。

“OK先生”は、別にウサギがご専門という訳ではないのだ。飼い主としては、十分に診ていただいたという感触であったので、その上さらに“エキゾチックの日”があるなんて感激だ。




* * * * * * * * * * * * * *


お会計は、7,060円だった。レントゲン検査は1枚目が3,150円、以降の2枚が1,500円、初診料はない。・・・激安だ。

これで経営が成り立つのか? ちょっと謎な病院だ。


それにしても、すっかり動物病院巡りが板についてしまって、殆ど趣味の領域に入りつつあるのではないかと危惧する今日この頃なのである…。





ウサギ